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2025年6月8日 23:29
数字に縛られすぎていませんか?SMART目標とグッドハートの法則から考えるAI時代の目標設定

目標を立てる際にSMARTなんていうフレームワークが人気だった頃がありました。
これは、Specific(具体的に)、Measurable(数値化して測定できる)、Achievable(達成可能な)、Relevant(目的に沿った)、Time-bound(期限が設定された)の頭文字をとったもので、すごく簡単に言うと「アバウトなバズワードの利用ではなく、きちんと数値化して目標を立てましょう」ということを意味しています。
まぁそれ自体を完全に否定するわけではないのですが、最近は数字だけか書かれたスプレッドシート情報を元に20分も30分も話す人なんかを見ていて
「なんか違うんだよなぁ」
と感じることが多々ありました。
そんな時に知ったのが、グッドハートの法則です。
名前だけ見ると、数値化して結果だけを求めるのではなく、温かな心を持ち数字では表すことができない価値にも目を向けて、皆で協力して目標達成をしましょう!
というような内容かと思ってしまうのですが、実は全然違います。
まずグッドハートとは人の名前です。そしてグッドハートさんが見つけた法則(元ネタは1975年に発表された論文にあるとされています)が
“When a measure becomes a target, it ceases to be a good measure.”
というものであり、大雑把に言うと「目標が数値化されると、その目標は良いものではなくなってしまう」ということで、自分の中では「手段の目的化」と同じような意味だと理解しています。
つまり、目標を数値に落としこんだ時点で、その数値が目標となってしまい、その数値目標を達成すれば全てOK、達成できないと全てNGという考えに陥る危険性を説いているのがグッドハートの法則なのだという理解です。
しかし、何故自分は最近数値化された目標を語ることに(以前よりも)違和感を覚えるようになったのでしょうか?
その理由の一つとして、やはりAIの存在が大きいと考えています。
AIにより仕事の速度が加速度的に上がっていく中で、KPIなどの数値目標はすぐに陳腐化する可能性が高くなるのではないでしょうか。
それを避けるためには頻繁に数値目標を適切なものに変えていく必要があるでしょうが、それは果たして現実的でしょうか(AIだったら現実的かもしれません:後述)。
また、数値を達成することが目的となることの危険性も我々は知っています。数値目標を埋め込まれた株取引システムのアルゴリズムが想定外の動作をした例がありますし、出来るだけ高いエンゲージメントを取ろうとするSNSのアルゴリズムは意図的に炎上を起こすかもしれません。
ここ数十年の間に増えてきたように感じる企業の粉飾決算も、ノルマである数値目標を達成するためにしょうがなく(←この考え自体が間違いですが)、知恵を絞り(←もっと違う場所に頭を使うべきですが)、行動をした結果なのかもしれません。
このように、一時はもてはやされた数値化した目標が時代と共に陳腐化し、逆のことを言っているようなグッドハートの法則というものが最近再び脚光を浴びてきたのだと考えています。
とはいえ、数値目標の管理が全く不要になるということを言っているわけではありません。それはある程度必要なのですが、数値管理や計算に関しては、これからはAIの力を借りて効率的に行うことができるようになるでしょう。
おそらくですが、目的さえ明確になっていれば、その目的の達成度を測るための定量的な情報を、AIがフレキシブルに収集し、毎回異なる(しかし最も適切な)KPI情報として見せてくれるようになるのではないでしょうか。
それならば、我々はもっと将来のビジョンについて考えたり、新しいものを創造するというような方向に力を注ぎ、数字だけ見て20分も30分も話すような仕事からはできるだけ脱却した方がよいのではないか、などと最近は考えているのです。